膝関節の痛みや変形の原因は、炎症・腫瘍・外傷によるものなど様々です。
激しい痛みを生じさせる疾患としては、変形性関節症や関節リウマチなどが良く知られています。若年層では、半月板損傷や靱帯損傷が多くみられることがあります。
保存療法としてリハビリを行いますが、場合によっては手術が必要な例もあります。
【概要】変形性関節症とは関節を構成する組織に退行性変化と増殖性変化が起こる疾患です。変形性膝関節症の罹患率は股関節や足関節に比べて高く、主に肥満や筋力低下による関節軟骨へのストレス増加が原因となります。
【主な症状】膝痛(特に膝内側が多い)、膝がO脚・X脚になる、膝が完全に曲げ伸ばし出来ない、関節に水が溜まる
【診断】レントゲン、MRI
①保存療法
変形性膝関節症の治療では、まず保存療法が選択されます。保存療法を行うに際して、日常生活指導を基盤に、薬物、理学療法、装具療法を行います。
◆日常生活指導
和式から洋式生活への移行を行う。正座から椅子へ、和式から洋式トイレへ等
◆薬物療法
外用薬(湿布、塗布剤)、ヒアルロン酸製剤の関節内注射など
◆理学療法
運動療法(特に大腿四頭筋の筋力強化)、痛みが出現している部位への温熱療法など
◆装具療法
膝サポーター、足底板
②手術療法
手術療法は、保存療法の効果、日常生活動作の障害の程度、全身状態などを考慮して選択されます。手術は主に人工関節全置換術が多く選択されます。
【概要】半月板損傷は膝関節の屈伸と回旋との協調運動が破綻した時に発生します。原因はスポーツ外傷によるものが多く、その他では転倒、捻挫、交通事故等によります。
【主な症状】
キャッチング(運動時に関節に何か挟まる感じがする)、轢音(関節屈伸時に「ゴクン」といった音が聞こえる)弾発現象(関節屈伸時に滑らかさが失われ、弾けるような動きになる)、ロッキング(膝を屈伸した際に損傷した半月板の一部が挟まり、完全に伸ばせなくなる現象)、膝崩れ (歩行中に膝の裏を押されたかのように「ガクッ」と膝が崩れる)
【診断】徒手検査、MRI
①保存療法
半月板は軟骨にかかるストレスを軽減する重要な役割があるため、出来るだけ残すことが重要です。実際の治療としては運動療法、膝サポーター、足底板、ヒアルロン酸の関節内注射があります。
②手術療法
関節鏡を用いての半月切除術・修復術等の外科的手術が選択される。スポーツへの復帰の期間は、半月切除で2~3ヵ月、縫合術では4~6ヵ月のリハビリが必要です。
【概要】ジャンプの着地、急激な方向転換、急停止など非接触時に起こり、タックルを受けて膝の外反が強制される等、接触時に起こることもあります。
【主な症状】受傷直後は著明な関節血腫に起因する関節痛が生じ、関節腫脹、運動障害や歩行障害も認めます。陳旧例では、関節の不安定性を訴え来院されることが多いです。
【診断】徒手テスト、MRI
膝関節へ負荷をどの程度かけるかにより治療方法が決定されます。
①保存療法
スポーツ愛好家でない場合は、大腿四頭筋やハムストリングスの筋力強化を徹底することにより手術を回避します。体育参加など膝のへの負荷を要求される時は、膝装具着用やテーピングの適応となります。
②手術療法
積極的なスポーツ参加者や、日常生活動作が障害される場合に適応となります。手術の場合は靭帯の再建術を行い、細かいプロトコルに沿ってリハビリを行っていきます。
【概要】スポーツや交通事故で脛骨前面を強打することによる発生がほとんどで、前十字靱帯損傷のように多様な受傷機転とは異なります。
【主な症状】軽度の関節腫脹、膝窩部(膝の裏)の痛みを認めます。関節の不安定性を訴えることはありません。関節の不安定性を訴える場合は、他の損傷の合併を疑います。
【診断】徒手テスト、MRI
①保存療法
ハムストリングスや大腿四頭筋の働きで安定性が確保されるので、まずは保存療法が第一選択となります。
②手術療法
他の靭帯損傷が複合して生じている場合は、手術療法が適応となります。
【概要】ラグビーやサッカー、バスケットボールなどのコンタクトスポーツで、膝の外側から内側への外力(タックル)により、関節に外反、または外旋力が強制されたときに、靭帯が過緊張して最終的に断裂します。スキーでの転倒時、ジャンプ着地時、ツイスト時でも発生します。
【主な症状】膝の内側に一致した圧痛、腫脹、熱感、荷重すると外反動揺性(X脚のような)が認められます。受傷直後は関節血腫が、慢性化すると水種が存在します。
【診断】徒手テスト、MRI
内側側副靱帯損傷はⅠ度~Ⅲ度に分類され、その程度により保存療法か手術療法が選択されます。
①保存療法
外用薬(湿布、塗布剤)、超音波、低周波などの物理療法により痛みの対策を行います。回復の程度を見て大腿四頭筋やハムストリングの筋力強化を行っていきます。
②手術療法
他の靭帯損傷などが合併している場合は、手術療法が適応となります。